前立腺がんとは
前立腺は男性にしかない生殖器官であり、前立腺がんは日本人男性に発症するがんとしては大腸がん、胃がん、肺がんに次ぐ第4位を占めています。遺伝子の異常や前立腺に作用する男性ホルモンの影響などによって起こるとされていますが、はっきりとした原因はわかっていません。高齢者の発症が多く、50歳を過ぎると発症率が高まる傾向がありましたが、血液検査で発見できるようになり、早期に発見できるケースが増えてきています。
膀胱のすぐ下に位置し、尿道のまわりを取り囲むように存在している前立腺は、分泌される前立腺液で精子を保護して栄養を供給し、運動を促す働きを持っています。この前立腺液は、精液の約30%を占めています。また、射精時には前立腺が収縮して精液が尿道へと送り出されていますし、排尿時の尿道収縮をコントロールする機能も担っているなど重要な器官です。
前立腺がんの症状
進行が比較的遅いため、初期には自覚症状がほとんどありません。
がん化した細胞が増殖して前立腺が大きくなると、膀胱や尿道を圧迫して排尿障害などの症状が現れます。頻尿や残尿感、尿が出にくいといった症状は前立腺肥大症と同じなので、精密な検査が必要です。
さらに進行すると膀胱や尿道に進展し、血尿や尿が出なくなる尿閉などの症状が起こり、転移で腰の骨やリンパ節に痛みなどが生じることもあります。転移で骨の病的骨折の痛みなどが生じることもあります。
膀胱がんとは
膀胱は腎臓から尿管を通じて送られてくる尿を一時的にためる場所であり、一定量の量がたまったら脳に尿意を伝える機能を持っています。
膀胱の内壁は粘膜で、尿路上皮(移行上皮)と呼ばれる細胞でできており、膀胱がんはほとんどの場合、尿路上皮細胞ががん化することで発症します。
膀胱がんは、がん細胞が広がる方向により2種類に分けられます。表在性膀胱がんは膀胱の内側に向かって隆起し、浸潤(しんじゅん)性膀胱がんは膀胱の外側に向かって貫くように広がります。
頻度が高い表在性膀胱がんは比較的悪性度が低く、転移もあまり起こらないという特徴がありますが、再発しやすくなっています。浸潤性膀胱がんは悪性度が高く、進展や転移を起こしやすく、自覚症状現れにくい特徴を持っています。
膀胱ががん化する原因ははっきりとわかっていませんが、喫煙がリスクを高めることは明らかになっており、高齢の男性に多く発症する傾向があります。
一般的な健康診断で行われる尿検査の潜血反応をきっかけに精密検査を受けて発見される場合がありますので、要検査となったら必ず専門医を受診しましょう。
膀胱がんの症状
肉眼でわかるほど赤い血尿が大きな特徴となっています。膀胱炎のような頻尿、排尿時の痛み、残尿感などが起こるケースでは、抗生物質の服用でも改善しないことが特徴となります。痛みをともなわないことがあり短期間で改善するため治ったと勘違いして放置してしまうケースもありますが、膀胱内で血液が固まって尿が出なくなり、緊急な処置を必要とされるケースもあるなど、症状の出方はさまざまです。
膀胱がんが進行すると、がんが尿管口をふさいで水腎症を発生させ、背中や脇腹などに痛みが発生する場合があります。また、浸潤性膀胱がんでは付近の骨やリンパ節に転移する可能性が高く、その周辺に痛みが生じる場合があります。
腎細胞がん(腎がん)とは
腎臓は血液から老廃物や不要な水分を取り出し、それを尿として尿管に送る機能を担っており、血圧のコントロールや赤血球を増やすホルモンを生成する役割も持っています。血液を濾過して尿を作るために、腎臓の内部には尿細管と呼ばれる細い管が張り巡らされていますが、この尿細管に発生するのが腎細胞がんです。
危険因子には、高血圧、肥満、喫煙があり、人工透析治療を長期に受けていると発症しやすいという指摘や、特定の遺伝子の異常が発症のきっかけになるという報告もあります。高齢の男性に多く、超音波(エコー)検査やCT検査などの画像検査で発見しやすいため、人間ドックや他の病気の検査などで早期段階の腎細胞がんが偶然発見されることも増えています。
腎細胞がん(腎がん)の症状
初期の段階では、自覚症状がほとんどなく、進行すると尿の色ではっきり判断できる血尿や腹部のしこりなどが現れます。血尿は痛みをともなわないことがほとんどです。
さらにがんが進行すると、全身的な症状が現れはじめます。発熱、食欲不振、体重減少、貧血などの症状が代表的なものです。赤血球増多症や高血圧、高カルシウム血症が現れるケースもあります。
骨転移による病的骨折や肺転移による咳や血痰などで、はじめて腎細胞がんが見つかるケースもありますので注意が必要です。
腎盂尿管がんとは
腎盂(じんう)とは、腎臓の一部として腎臓内に存在する袋状の組織です。また、尿管は腎盂から受け取った尿を膀胱に運ぶ長い管です。腎盂尿管がんは尿の通り道である尿路内のさまざまな場所で同時に多発しやすい傾向を持ち、腎盂と尿管の両方に発生することもよくあります。さらに、性質や治療法がほとんど同じであることから、腎盂尿管がんとひとまとめに呼ばれています。また、腎盂尿管がんの治療後に比較的高い確率で膀胱にがんが発生します。
発症の危険因子には喫煙があり、高齢の男性が発症しやすい傾向を持っています。
腎盂尿管がんも腎細胞がんと同じように、人間ドックや他の病気のための検査で発見されることがあり、その場合には比較的初期に見つかる可能性があります。
腎盂尿管がんの症状
初期の段階では、自覚症状がほとんどなく、進行すると尿の色ではっきり判断できる血尿が起こり、痛みはともないません。
進行すると大きくなったがんが尿管をふさぐ水腎症や出血が起こり、背中や脇腹に痛みが生じる場合があります。
水腎症について
膀胱がん、腎細胞がん、腎盂尿管がんなどが進行して起こる水腎症は、長引くと尿が腎臓にたまっている状態が続いて腎臓の機能低下につながる可能性があるため、早急な治療が必要です。健康診断や人間ドックで水腎症の可能性を指摘されたら、泌尿器科の専門医を受診して精密な検査を受けてください。